申論題內容
一、日譯中(25 分)
物心ついてハッとあたりを見回すと、家にはちちおやというものが
いなかった。いぶかしく思ってははおやに「なぜ」ととうと、ははお
やは本のぎっしり詰まった、いくつもの書棚を指さして、「この本の
山をとうさんとおもいなさい」と答えた。本がちちおや、となれば、
たとえばシェイクスピアはほら吹きおやじ、ドストエフスキイはおし
ゃべりおやじ、そしてトルストイはせっきょうおやじである。わたし
のちちおやたちはじつにゴーカケンランたるものであった。
そうなると当然、本をふんだりするのは途方も無いおやふこう、本
をうっかり跨いでとおってさえ、三日はゆめでうなされる。また、わ
たしには用済みの本はなく、そこでこしょてんへ本をうることもでき
ない。なかにはたしかにひどい本もあるけれど、いくらひどかろうが
ちちはちち、やはり「でていけ」とはいいにくい。