申論題內容
2、
会社主義の問題というのは、過労死などを生み出す従業員共同体の問題、個人を
抑圧する日本的共同体の批判だったのですが、この問題意識はもう古いともいわれ
ますね。
それは、日本経済の古きよき時代の問題意識だ、と。一九九〇年以降の不況期に
なってみると、それ以前の会社主義は、たとえ過労死や個人が抑圧される問題はあ
っても、雇用が保障されているだけよかったじゃないか、と。
しかし、会社主義的な雇用保障というのは、九〇年代以前でも、二重構造でした。
基幹労働力、つまり正社員には長期雇用保障を与えながら、縁辺労働力であるパー
トや外国人、派遣の人など非正社員にその保障は及ばない。この二重構造は、会社
システムそのもののなかに組み込まれているんですね。
そして、日本では、基幹労働力の雇用を守るためのバッファーが、大きく二つあ
る。
アングロサクソン的資本主義、特に米国では景気のいいとき、社員を大量に雇う
代わりに、景気が悪くなると大量にレイオフ、解雇する。日本では正社員は景気が
悪くなっても簡単に解雇できないから、景気がいいときでもあまりふやさない。そ
うではなく、正社員の残業時間をサービス残業を含めてふやして調整する。これが
第一のバッファー。それで過労死などの問題が出る。
もう一つのバッファーは、景気が悪くなると、日本では正社員を切らないかわり、
非正社員を切る。不況が続いて、この非正規社員、二重構造のなかの縁辺労働力が
分厚くなり、その流動性に頼っているのが現状で、さらに、正社員のサービス残業
も減るどころかふえている現実がある。
(井上達夫『リベラルのことは嫌いでも、リベラリズムは嫌いにならないでくださ
い』
)